【第134話】

笑顔


せっかくのお祭りなのに、泣いちゃった・・・・・

なんで、私って、いつも涙もろいんだろう・・・・・

幼友達が、おたおたと私のことを見ている。


「チェルト・・・・・・・どこか痛いの?」

 

「・・・・・・ううん・・・・・・・・

 なんでもない・・・・・」

 

「何でもないって顔じゃ・・・・・」

 

「・・・・ほんとうに、なんでもないの・・・・・

  ごめんね、急に泣いちゃって。

 いろいろ、思い出しちゃって・・・・・・

 こんなにめでたい日なのに・・・・・・・・私って変ね・・・・・」

 

「・・・・・・今日は家で休んだ方がいいよ。

 町の人やお城の人には

 チェルトがアリアハンについたこと伝えておくからさ。

 ね?」

 

「うん・・・・・・・・・ありがと・・・・・」

 

「おふくろさんも安心させてやりなよ。

 おまえの、かあさん、元気なことでは有名だけれど

 やっぱり、おまえが旅立ってから元気なかったし」

 

「・・・・・・・お母さんが?」

 

「そう、”あの”チェルトのお母さんがだよ」

 

「・・・・・・”あの”お母さんが・・・・・・ね・・・・・・・

 ・・・・・・・ひどいなぁ・・・・・

 ・・・人の母親のことをつかまえて、そこまで言うことないじゃない」

 

「やっと、笑ったぁ〜」

 

「そうだよ、おまえは笑顔が一番!

 はやく、おふくろさんにあってきなよ」

 

「うん」

 

みんなの気遣いがうれしかった。


家に帰ってきた・・・・・・・・・

前にもこんなことあったよね。

ムーンに・・・・・会う前。

ムーンにも後でちゃんと報告しなきゃ。

そんなことを考えながら、家に入る。

 

「どなた?」

 

ドアを閉める音が聞こえたのか

奥から母さんの懐かしい声が聞こえた。

何も言わずに、その場で待った。

 

私が答えないので

母さんがパタパタとスリッパの音をさせながら、

駆けつけてくる音が聞こえる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「お・・・かあ・・・・・・・さん・・・・・・・」

 

ちょっと声がうわずってしまった・・・・

 

お母さんに抱きつくの、照れくさかった。

 

「お帰り・・・・・・・チェルト・・・・・・」

 

どんな顔をお母さんに見せるか

家に帰る途中、悩んだけれど

お母さんの姿を見て、泣きそうだった・・・・・・

涙がこぼれそうだった。

また、泣いちゃう・・・・・・・

 

でも・・・・・・・ここは・・・・・・我慢して・・・・・・・・

思いっきり、笑うことにした。

 

「ただいま・・・・・・かあさん・・・・・」

 

とびっきりの笑顔をお母さんに見せて言ったつもりだった。

お母さんも私の笑顔を見て

泣きそうだったけれど、笑ってくれた。

やっぱり、笑顔が・・・・・・一番だよね・・・・・・・・


第135話 甘え

前ページ:第133話 「わたしが見たかったもの」に戻ります

目次に戻ります

ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります