【第176話】

上から来ました


全魔法力と引き替えに、どうにか異世界へ来た私。

はぐりんの偵察によると、近くに家があるとのことだった。

私たちは、その家に向かうことにした。

人間が住んでいれば、いいんだけれど・・・・



家の近くにいくと、人がいた。

よかったぁ・・・・・


やっぱり、この世界にも人はまだいるんだ。

ということは、まだ完全にゾーマの手に落ちたわけじゃないんだ。


そう考えると希望がでてきた。

少しの希望があれば、それにかける。

絶対にあきらめない。


私からその人に声をかけようと思ったら

あっちから声をかけてきた。


「あれ?

 あんた、どうやってここにきなすった?」


「あ・・・・・あの、はじめまして。

 どこから来たというとちょっと困るんですけれど・・・・

 ええと・・・・・上から来ました」


我ながら、なんてへんてこりんな答えしかできなかったんだろう。


「うえ?」


「え、えっと、きっと信じてもらえないとは思うんですけれど

 私、ここの世界の人間じゃないんです。

 違う世界の人間で・・・」


人間、突然質問をされると答えられないものだ。

ふえぇ~~ん、こんなこといったら

どう考えたって怪しい人間にしかみえないもん~


私がどうやって弁解しようか考えていると


「ははぁ~ん、そういうことか。

 そういえば、じいさまに聞いたことあるなぁ。

 このアレフガルドとはまた別の世界があって、

 大魔王ゾーマが来るまでは、つながっていたらしいだけれど、

 もしかしたら、そこからきなすったのか」


「大魔王ゾーマ!」


「ど、どうなさった!」


「あ、ご、ごめんなさい・・・・

 ちょっとびっくりしちゃって・・・・」


「あっちの世界でも、ゾーマは悪さしているんかい。

 まぁ、仕方ないだろうなぁ。

 もうやつを止めることは誰もできやしないさ」


やはり、こちらの世界でも、ゾーマは

私たちの世界でバラモスと同じ、力による支配を

うけているようなのは確かなようだ。


今、私に足りないのは、情報だ。

私はこの世界のことを何もしらない。


ただ、わかったことは、この世界は「アレフガルド」ということだけだ。

とりあえず、この場は、いろいろな情報を聞きたい。


「あの、この世界には、他にも人は住んでいるのでしょうか?」


「あ?

 あぁ、もちろん、住んでるとも。

 魔物にびくびくとしてだがな。

 しかし、いつ殺されるかわかりゃしない。


 町にいけば、いつ襲撃にあうかわからない。

 だから、私はこの誰もいないところで暮らしているのさ。」


「そうなんですか。

 あの、町はここから、近いんでしょうか?」


「あぁ、ちかいさ。

 ちょっと海を越えなければいけないが、

 東に向かうと、ラダトームという城下町があり、

 アレフガルド一番の大都市だ。

 もし、町にいくんなら、ぼろい船だが、余っているのがあるからやろう。

 大海原をいくのはとても無理だが、すぐ近くのラダトームの海岸に行くまでなら

 充分だろう」


「ありがとうございます!」


私はその人の行為に素直に甘えることにした。

 


第177話 浅はかな考え

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