六月九日

グランバニアで調べているが、妖精伝説は各地に広がっているわりに、場所につ いてはどうも特定できない。わずかにサラボナの地方により詳しい話が残ってい るくらいだろうか。
六月十日

埒があかない。唯一の希望はサンタローズだ。僕がかつて妖精にあった場所。そ れに、僕か一度村に戻った時、小さな子供が寝言で「ベラ」と名前を呼ぶのも聞 いた覚えがある。
なにか分かるかもしれない。
六月十一日

結局何もわからなかった。念のため子供たちにも聞いてみたが、何も見えないと いう。
ついでなので今日はここに泊まって、明日はラインハットに行ってみようと思う。

サンタローズにはかすかに再建の兆しが見えてきた。もう知っている人はほとん どいないけれど、少しだけ嬉しい。

六月十二日

ラインハットはいい国になった。ヘンリーとデールはいい政治をしているようだ。 顔を見せるとヘンリーは本当に驚いたようだった。夜までいろいろともてなして くれた。
僕が石になっていた八年のあいだ、随分心配してくれたようだ。「八年分の若さを手に入れたわけだ」と、皮肉をいわれる。マリアにたしなめられてすぐに失言と謝ったけれども、まあヘンリーだからこれは許す。
こういうところもヘンリーらしい。

息子のコリンズ王子もヘンリーそっくりだ。というより、ほとんどそのままとい っていい。子供たちも今日は随分と翻弄されたようだ。


妖精の話をすると、マリアさんが宴の席で妖精の歌というのを聞かせてくれた。 これは今まで聞いたことの無いものだ。よく聞くと、修道院にいた頃に、院長か ら聞いたという。
明日あの修道院に行ってみよう。


たった一日とはいえ、彼らに会えたのは懐かしい。ビアンカや父さんも加えて、 もう一度みんなで旅をしてみたかった。

 
 
 

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